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初めての釣友

 
 
初めてへら鮒釣りをしたのが中学入学まもない頃でした。中学入学と同時に調布から杉並区の天沼に引っ越した私は、同じクラスにいた山根というヤツと仲良かったのがきっかけでした。お互い小学校は違うけど二人とも釣りが好きですぐにうち解けたのです。
東京の阿佐ヶ谷駅の裏にある釣り堀『寿々木園』で二人で初めてへら鮒釣りをやりました。この日以来私たちはへら鮒釣りにのめり込んでいったのです。山根は釣り雑誌などからへら鮒釣りの情報や釣技などから得たことを私に教えてくれたものです。マッシュの練りエサを上手く作れないため山根の家のお風呂場に行き水を張った風呂釜に二人で練ったマッシュを投げ込み、溶け具合をジッと見つめることもしょっちゅうでした。
へら鮒釣りに使う道糸は『ラージ』の赤い糸が良いらしいと聞けば、二人で阿佐ヶ谷のパール街にある釣具屋さんに見に行く。当時からラージの糸は高くて値段を聞いた瞬間ポケットの中の小銭をすかさず数え、ラージは諦めて安い透明の糸を買った記憶があります。
しばらく寿々園で二人で腕を磨き野釣りにも挑戦しました。雨が降っても良いようにボロ傘の柄に鉄の棒を取り付けられるようにもしました。山根といった釣り場は多摩川、宮沢湖、印旛沼中央水路、他。朝一番の電車に乗って行ったものでした。ヘラブナは滅多に釣れなかったけど、あのときのことは今でもよく覚えています。画像の竿は38年前初めて買ったへら竿です。12尺グラスロッドで当時2000円ぐらいだと思う。この一本の竿を持って寿々園そして野釣りに行ったのです。私はたまにこの安物へら竿を磨いてあげます。今では使うこともないけど、この竿だけは大切に持っておこうと思ってる。今こうして浮子が作れるのもこの竿のお陰だからなんです。
 
山根とは中学を出て離ればなれになりました。私は中学卒業後千葉の高校に行き、釣りから離れてバスケットに没頭することになったからです。しばらくは連絡を取り合っていましたが、釣りから離れた私と電話で話しても面白くなかったのでしょうね。それからまもなく連絡がとぎれていったのです。
へら鮒釣りを再開した20代の半ば、私は山根の家に行きました。かれこれ11年ぶりです。元気でいるだろうかと懐かしさを押さえながらチャイムを鳴らすと、見覚えのある山根のお母さんが出てきました。私の顔を見るなり『テッチャン?!』そう言って驚いていました。私は『お久しぶりです、山根君はお元気ですか?』そう言ったとたん、お母さんは一瞬驚きの表情を見せ山根の住んでいた2階に案内してくれました。なにか様子が変だなと思いながらついていくと、見覚えのある山根の部屋の中でお母さんがポツリポツリと話し始めたのです。3年前東名高速で自動車事故で亡くなったということでした。大学を出て就職し、給料で買った初めての車で事故を起こしたとも言っていました。涙を流しながら話してくれたお母さんの声を聞きながら呆然と立ちすくし涙も出ない私でした。
しかし、部屋の隅に立てかけてあった数本のへら竿とへらバッグを見たとたん大粒の涙があふれ出しました。当時のことが走馬燈のように頭の中を駆けめぐったのです。
もう二度と山根と釣りに行くことはできなくなりましたが、これも運命なのかもしれません。しかし私もいつかはあの世にき山根と再会したら今度は二人で三途の川で釣りでもするかな。なんて考えています。うんうん
  
 
 
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へらうき(ヘラウキ)工房 茅春
 http://herauki.jp

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