生まれ育った東京からここ奥飛騨に住み着いて早10年ちょっと。かーちゃんの実家にマスオさんをしています。奥飛騨に住む方達も大変釣りが好きです。冬はイワナやヤマメ、夏は鮎釣りと釣り好きベテランが顔を揃えています。
このベテラン達が私の仕事場に来て魚拓や写真を見るたびに必ず決まって言う言葉が『鯛か?』です。きっと体高などが鯛に似ているんでしょうね。
こちらで盛んにやってる鮎釣りですが私も一度だけやったことがあります。ヤマメやアマゴ釣りは小さい頃からやったことがあるのですが鮎釣りは未経験でした。せっかく奥飛騨に来たのだから鮎釣りぐらい出来ないとなんて思ったんです。少ないお小遣いから大枚をはたき道具類を一式買いそろえました。友達が貸してくれると言ってくれましたが、人の道具を借りるのは嫌いなのともし壊したらと考えたからです。
道具を揃えて一人で早速釣り場に向かいました。家の近所にある釣り道具屋さんでおとり鮎を3匹買って意気揚々と河原に向かったのです。
釣り場についてまずはおとりに鼻カンを通します。初めて握った鮎、ドキドキさせながら鼻カンを通すのですがなかなか通りません。あちこち向きを変えながら差し込むんだけど通らない。思い切って力ずくで差し込んでいたらおとり鮎の鼻から大量出血。そのままあの世行きになっちゃった・・・
二匹目は元気なおとり鮎でした。今度こそ!と気合いを入れて鼻カンを通します。ヌルヌルする鮎をギュッと握りしめること数分。今度は鼻からの出血もなく無事に鼻カン取り付け終了。しかし握りしめていた鮎は気を失っていた。指で頭をたたいてもビクともしないのです。きっと力一杯握っていたからに違いありません。残ったおとり鮎はあと一匹です。これを死なせたら釣りにならない。恐る恐る慎重に鼻カンを通すと今度はすんなりと通った。そのまま立ち上がりおとりを岸付近から沖に泳がせようとするけどその場から動かない鮎。押しても引いても沖に行こうとしない鮎にしびれを切らした私はおとり鮎をムンズ!と手にとり沖に向かって投げる!投げる!しばらくすると白い腹を上にしたおとり鮎はプカリプカリと水面を漂ったままこれまた溺死しちゃった・・・
これ以来鮎釣りはしたことがありません。もっぱら橋の上から友達が釣ってるのを見学するだけです。あんなに長い竿を手足のように扱う友達に敬意の眼差しを向けながら10年前にあの世に行かせてしまった罪無き三匹のおとり鮎のことをぼんやりと思い出す私がいます。